女性病
生理痛が酷いです。低用量のピルしか改善する方法はないでしょうか?
多くの女性が悩んでいる生理痛の原因は、黄体ホルモン『プロゲステロン』の分泌量の増加によるものです。
プロゲステロンは妊娠に備えるために、子宮内膜を厚くしますが、着床しなかった場合には子宮内膜を体外へ排出するために子宮を収縮させる『プロスタグランジン』が放出されます。黄体ホルモン量が多いと『プロスタグランジン』が過剰に分泌され生理痛を引き起こします。
低用量ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンから出来ているので、身体は両ホルモンの分泌の必要がなく痛みをコントロールできるという仕組みです。
一方、東洋医学では、生理痛は瘀血(血の滞り)と捉えます。血の滞りを改善すると同時に、その原因となるものを改善してゆきます。瘀血の原因には冷え(寒邪)、ストレス(氣滞)、甘いものの摂り過ぎなどが考えられます。
また瘀血にともない水分代謝が悪くなりますので、むくみがある場合は、むくみを取る処方も加えます。
多くの方はこの根本的治療で良くなられています。
低用量ピルと漢方のどちらを選ぶかは、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分の体質やライフスタイルに合うものを選ぶのが良いですね。
低用量ピルのメリット・デメリット
メリット
- 排卵を抑えて生理痛を軽減
- 生理周期が安定し、経血量も減る
- 子宮内膜症の進行を抑える
- ホルモンバランスが整い、PMS(生理前の不調)も軽減
デメリット
- 服用を続ける必要がある(飲み忘れ注意)
- 血栓症リスク(特に35歳以上や喫煙者は注意)
- 体質によっては副作用(吐き気・頭痛・むくみなど)
漢方のメリット・デメリット
メリット
- 体質改善しながら根本的に生理痛を軽減
- ホルモンバランスを整え、更年期や妊活にもプラス
- 副作用が少なく、長期間続けやすい
デメリット
- 効果が出るまで時間がかかる(即効性は低め)
✔ すぐに痛みを抑えたいなら「低用量ピル」
✔ 根本的な体質改善をしたいなら「漢方」
✔ 妊活を考えているなら「漢方」がおすすめ(ピルは排卵を抑えるため)
ホットフラッシュの症状がつらいです。
多くの方が悩まされるホットフラッシュですが、大きく分けて2つの原因があります。
加齢や過労、ストレスによって「腎」の陰が不足すると、体を冷やす力が弱まる場合と陰のバランスが崩れ、相対的に「陽」が亢進し、ほてりやのぼせ、寝汗、口や喉の渇き、皮膚の乾燥、イライラ、不眠などの腎陰虚(じんいんきょ)の症状があります。
また、「肝」と「腎」両方の陰がともに不足すると、体を冷ます力が低下し、ほてり、発汗、動悸、頭痛、めまい、イライラ、情緒不安定等の肝腎陰虚(かんじんいんきょ)の症状が現れます。
強いほてり、夜間の発汗、口や喉の乾燥、動悸や不眠などの激しい症状を陰虚火旺(いんきょかおう)です。同じホットフラッシュでも、ホットフラッシュの原因によって処方が異なりますのでご相談下さい。
東洋医学的な治療法
漢方薬
ホットフラッシュの原因によって異なる処方が用いられます。自分のタイプを見極めることが大切ですので、専門家に相談しましょう。
- 腎陰虚タイプ → 体を潤し、腎の働きを補う
- 六味地黄丸(ろくみじおうがん)(補腎・滋陰)
- 知柏地黄丸(ちばくじおうがん)(熱を冷ます)
- 肝腎陰虚タイプ → 肝と腎の陰を補う
- 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)(目の疲れ・のぼせも改善)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)(ストレス・不眠にも)
- 陰虚火旺タイプ → 余分な熱を冷ます
- 滋陰降火湯(じいんこうかとう)(のぼせ・動悸に)
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)(ほてり・口渇に)
食養生(食事療法)
「陰を補い、熱を冷ます食材」を積極的に取り入れましょう。
✅ おすすめ食材
- 【腎を補う】黒ゴマ、黒豆、山芋、クルミ
- 【陰を補う】白きくらげ、豆乳、梨、山査子(さんざし)
- 【熱を冷ます】トマト、ナス、スイカ、緑豆
- 【水分を補う】ナツメ、ハチミツ
❌ 控えたいもの(熱を生みやすい)
- コーヒー、唐辛子、揚げ物、アルコール、焼肉
ツボ刺激
ホットフラッシュに効果的なツボを押すことで、症状を和らげることができます。
✅ おすすめツボ
- 三陰交(さんいんこう)(内くるぶしの上3寸)
→ 女性ホルモンのバランスを整える - 太谿(たいけい)(内くるぶしとアキレス腱の間)
→ 腎を補い、ほてりやのぼせを和らげる - 合谷(ごうこく)(親指と人差し指の間)
→ 自律神経を整え、ストレスを軽減
📌 やり方
1日に2~3回、ゆっくり5秒押して離すを繰り返す(各ツボ2分程度)
生活習慣の改善
- ストレス管理:深呼吸・瞑想・ヨガでリラックス、趣味や好きなことをしてリフレッシュ
- 適度な運動:ウォーキング・ストレッチで血流を良くする
- 睡眠をしっかりとる:寝る前にスマホやカフェインを控える
喉が詰まる感じがして不安になります。
更年期の代表的な症状の一つで、東洋医学では「梅核気(ばいかくき)」、西洋医学では、ヒステリー球と呼んでいます。喉に何か詰まっているような感じがするのに、実際には異物がない状態です。
ストレスや感情の抑圧によって気の流れが悪くなり、喉の周囲に滞ることで詰まったような感覚を引き起こします。
「肝気鬱結(かんきうっけつ)」「脾気虚(ひききょ)」に対する漢方処方で改善されます。
イライラして心が落ち着きません。
更年期の代表的な症状の一つで、氣の巡りや血の巡りが悪くなっている状態でおこります。イライラや怒りの感情は、「肝」に関連するものですので、肝の働きを補ってあげることも大切です。
肝気鬱結(かんきうっけつ)タイプ
- 特徴:イライラ、怒りっぽい、胸のつかえ、ため息、PMSが強かった人に多い
- 原因:ストレスや感情の抑圧によって、肝の「気(エネルギー)」が滞る
- 漢方薬:加味逍遙散(かみしょうようさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
肝火上炎(かんかじょうえん)タイプ
- 特徴:イライラが強く、怒りが爆発しやすい、顔のほてり、口が苦い、眠りが浅い
- 原因:「肝の火」が頭にのぼることで精神が不安定に
- 漢方薬:竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
心腎不交(しんじんふこう)タイプ
- 特徴:イライラとともに不安感、不眠、動悸、のぼせ、寝汗、集中力低下
- 原因:「腎陰」が不足して「心火」が制御できず、情緒不安定に
- 漢方薬:知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
血虚(けっきょ)・陰虚(いんきょ)タイプ
- 特徴:疲れやすく、精神不安、落ち込み、不眠、肌や髪が乾燥、目が疲れる
- 原因:ホルモン低下により「血」「陰(体のうるおい)」が不足して情緒不安に
- 漢方薬:加味帰脾湯(かみきひとう)、当帰補血湯(とうきほけつとう)
【女性病総論】
東洋医学における女性病、とくに更年期や生理痛などは、氣・血・水・陰陽のバランスが崩れることで臓器の不調につながり、さまざまな症状が現れます。個々の体質や症状に応じた根本治療をしていきます。
1.更年期障害
更年期の原因
更年期は、女性のホルモンバランスが大きく変化する時期であり、多くは45歳〜55歳の間にさまざまな症状が現れます。この時期には、卵巣の機能が低下し、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが減少します。東洋医学では、更年期障害は主に「肝」「腎」「陰陽」の不調に関連すると考えられています。
①肝の不調
肝は「氣の流れ」を司る臓器です。肝の氣が滞ると、ストレスや感情の不安定が生じ、ホルモンバランスを崩すことがあります。更年期の女性が感じるイライラや不安、抑うつなどは、肝の氣の滞りが原因となっていることがあります。
②腎虚
腎は生命力の源とされ、特に女性の生理や更年期に大きな役割を果たします。腎が虚すると、ホルモン分泌の低下、発汗やほてり、眠れない夜などが現れることがあります。
③陰陽の不均衡
陰(冷静さや潤い)と陽(活動的なエネルギー)のバランスが崩れると、体温調節がうまくいかず、ホットフラッシュや冷え症が生じることがあります。
更年期障害の治療法
漢方薬
漢方薬では、腎虚や肝の滞りを改善するための処方がされます。例えば、「加味逍遥散(かみしょうようさん)」は肝の氣を疏通し、心を安定させる作用があります。「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」は腎を補う薬で、更年期の症状に対応するために使われることがあります。
食事療法
更年期の女性には、身体を温める食材(例:生姜、黒ごま、鶏肉)を摂取し、血の巡りを良くする食事がおすすめです。また冷たい食べ物や湿気を引き起こす食事(例:生野菜、冷たい飲み物)は避けましょう。
2.生理痛
生理痛の原因
生理痛は、東洋医学では「氣滞」や「血瘀(けつお)」、あるいは「寒邪(かんじゃ)」の影響によるとされています。
・氣滞:肝の氣が滞ることにより、子宮内の血流が悪くなり、生理痛が発生することがあります。特にストレスや精神的な負担がある場合、氣の流れが悪くなり、生理痛がひどくなることがあります。
・血瘀:血液の流れが滞ることで、子宮内膜が適切に剥がれず、痛みを引き起こします。血が滞るため、凝固した血塊がみられることもあります。
・寒邪:体内に冷えが溜まると、血液の流れが悪くなり、子宮の収縮が強くなるため、生理痛が悪化します。冷え性が原因で生理痛がひどくなる女性に見られるパターンです。
生理痛の治療法
漢方薬
漢方薬では、生理痛の原因に応じて処方が行われます。例えば、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は、血行を促進し、血瘀による痛みを改善します。「温経湯(うんけいとう)」は、身体を温めて冷えを取り除き、血の流れを改善します。
温熱療法
冷えが原因で生理痛がひどくなる場合、温熱療法(例:温かいお腹の貼り薬や温湿布)を使って身体を温めることが効果的です。
3.その他の女性病(生理不順、卵巣機能低下など)
生理周期の乱れは、氣・血・水の不足や滞り、特に肝の不調が影響して起こります。また、ストレスや過労、冷えなども原因として考えられます。腎虚や血虚が原因で、卵巣の機能が低下することがあるため、腎や血を補い、女性の生理機能を支えるための漢方薬が処方されます。