幼いころ夜更かしをしていると祖母が、夜は魔物が来るから早く寝なさいと言われたものです。また草も木も眠る「丑三つ時」という何やら夜は怖いイメージがありましたが、最近では電気の明かりが夜遅く、あるいは一晩中煌々と付き私たちの身体の概日リズムにも大きく影響しています。先人たちは暮らしの中での感が鋭く働き、身体にとって良いこと悪いことの判断ができていました。
私たちは利便性を求めることでこの感を失ってきているようです。睡眠不足とアルツハイマー病、心臓血管疾患、脳卒中や糖尿病の関連が言われています。祖母が言った魔物とはこの事ですね。
何年か前に「午前0時からは神様の時間だから人間は寝てないといけない」というのを聞いて夜の怖いイメージが払拭。寝ている間は何か大きな力が働いてすべての生き物を、甦らせてくれると思うと嬉しくなりませんか?
実際、疲れていても一晩ぐっすり眠ると回復しますし、少々の悩みなら、朝になるとなんだか軽くなっていませんか?実はそれを裏付ける脳科学分野の研究が最近数多く報告され始めました。
夜眠ると私たちは意識がなくなりますね。でも心臓は動いています、呼吸もしています。尿も造られています。自律神経系の臓器は全て無意識の状態で働いてくれています。人間自分の力だけで生きているのではないですね。
人智を越えた大きな力、something greatが働いているとしか言いようがありません。まさに神様の時間というところでしょうか。
最近の研究では私たちの睡眠には、3段階「浅い睡眠」「急速眼球運動(レム)睡眠」「深睡眠」があるとされ、「深睡眠」の時には目覚めているときの脳波と非常に異なったロングバースト波と呼ばれる「デルタ波」となります。全く意識のない状態です。この無意識状態のときに、脳細胞は休止しているのではなく、場所によっては目覚めているときよりもむしろ活発に働いています。
ロチェスター大学のマケイン・ネダーガー氏によると昼間は、脳細胞はフル回転しており老廃物を処理し、傷ついた細胞を修復する等の余裕がないのですが、「深睡眠」時にスイッチオンになる遺伝子がありこれらは回復と代謝に結びつくそうです。いわゆる身体の甦りですね。
そしてもう一つ大切な働き、脳の情報処理と記憶定着です。何かを覚えようとした後、眠らないでいると学習能力が破滅的になります。一夜漬けの徹夜の試験勉強はダメなのです。
さらに魅力的な働きがあります。複雑な問題の解決案や新しい発想などは睡眠の中で構築されるそうです。つまり夜眠ることで昼間の情報を処理し創造性が生まれるのです。
脳科学者たちはここまでしか言っていませんが、新しい発想や創造性いわゆるインスピレーションには昼間の心持、特に寝る前の心持が大きく関与していると私は思います。私たちめいめいは、同じ刺激を受けてもそれぞれ脳というコンピューターへの入力は異なります。
物事のマイナス面ばかり捉えそれを入力すると、脳はそのデータを夜の間に潜在意識の中に落とし貯めてゆきます。一方いつも積極的思考で物事を捉えていれば、潜在意識の中にはそのデータがたまってゆきそれが基となり、より良い発想が生まれ出てきます。
睡眠は生産性のないものではなく身体の修復そしてより良い思考回路を生み出す大切なものです。それには8時間の睡眠が必要だそうです。
睡眠の質を高めるために早めの夕食、蛍光灯の強い光を浴びない、スマホ、パソコンの画面を見すぎないようになさって下さい。そして何より大切なのが、常に物事をより良い方向性でとらえる習慣です。どんな時でもにこにこ微笑んで生活を楽しんでいると、夜の睡眠時により良いインスピレーションをキャッチできますね。